愛がゆえ




近頃とても過酷だ。
朝、洗面台の鏡に映る自分の顔を見てテンションが下がる。
それは何故か。

「おはよう

「おはよ……恭弥」

「ワオ、今日もすごいクマだね。目の下真っ黒じゃない」

「だぁぁぁれのせいだ誰のぉぉぉ!!!こんの!!」

「さあ、知らない」

そう、鏡に映る自分の顔は朝からゲッソリ。いかにも疲れきった表情だ。
笑けるほどにクマがすごい、おまけに目も腫れ肌も荒れ始めている。
それもそのはず、顔に異常が出るほどの寝不足がここ数日続いているのだ。
どうしてここまで寝不足に追い込まれているのか、それは全てこの男のせい、この……凶暴変態自己中魔人!
横で呑気に歯を磨く私の幼なじみ、雲雀恭弥!ああ、許されるものなら一発殴ってやりたいぃ、後が怖いから我慢です。
先日まったく意味の分からない【僕との十ヶ条】という一枚の紙を押し付けてきたのが事の始まり。



(おさらい)

僕との十ヶ条。

一,幼馴染じゃなくて夫婦という自覚を持ちなよ。
二,学校が休みの日も登校する事。僕の為に。
三,僕に出会えた事を常に感謝する事。
四,一日一回は僕の膝上へ座る事。
五,僕以外の人間と群れる事は許さない。罪だ。
六,帰宅は僕の仕事が終わるまで応接室で待機。当然だよね。
七,電話は2コール以内に出ないと咬み殺す。
八,一緒にお風呂入ってあげてもいいよ。
九,夜が寂しいなら一緒に寝てあげてもいいよ。枕は二人で一つって決まってるけど。先日購入したんだ。
十,僕の家に住みなよ。なんなら苗字も雲雀になればいいんじゃない。



この十ヶ条、恭弥に都合のいい事項ばかりで、ふざけるな、と拒否したのだが。
あるピンチな事態が発生し、助けてあげる変わりに十ヶ条を受け入れなよ、と交換条件を突きつけてきたのだ。(第六話)
あの時は恭弥に助けてもらう以外に選択がなかったのでしぶしぶ、本当にしぶしぶしぶしぶ了承してしまう展開へ。
それからというもの家へ帰宅すれば私の家具、衣服、要するに所持物が全てなくなり恭弥の家へ運ばれていた。
さっそく十ヶ条【十】が実行されていたのだ。
寝不足の原因はここからだ。十ヶ条【九】が実行されるはめになったあの日から!
一つの枕で一緒に寝るようになってからというもの、なさけないことに全く緊張して眠れないのだ。
いつも恭弥に背を向けて端の端で寝ているのだが後ろからぎゅぅぅぅっと抱き締められると、もう……もう!心臓が爆破されるような感覚が襲ってくる。
いくら幼なじみとはいえ恭弥も男の子。目がさえて血走って見開いて。
昨夜はどういうわけかいつも以上に力強く抱きしめられた。あれは窒息してもおかしくなかった。
もう、いやだ、私はあんたの抱き枕じゃないんだ!
おかげで朝からこのクマ、目の腫れ、肌荒れの連発。
はあ、幼なじみのこのおかしな行動、どうにかならないものか。
恋人同士でもないのにここまでする必要があるのかな。前に告白されて断ったはずなんだけど。
正直に言うと、今はまだ異性を意識するような関係にはなりたくない。ただ信頼できる仲でいたいのに。
なのに、こんな私の気持ちも知らず恭弥は。ったく、ほんとにもう!
このままじゃ体がもたないのが目に見える、ぼろぼろになっちゃうよ。

「あ、。鏡見て」

「……なに」

下をうつむき拳をがたぶる震わせていると、突然恭弥が鏡を指差し不気味に笑い出した。あ、嫌な予感。
何かと鏡に視線を移せば、ただ私と恭弥が肩を並べて歯を磨いてる姿が映っていて何ら異常はない。
すると一歩私の方へ近づき一言。

「夫婦、って感じがする」

「は?」

「朝から幸せを感じれたよ」

「あの、さ。言わしてもらうけどね、私と恭弥は幼なじみでしょ?恋人でさえないのにどうすれば夫婦になるのさ!」

「恋人?ああ、恋人なんて期間は僕たちに必要ないんじゃない」

「へ、なにそれ」

幼なじみは幼い頃から一緒に育ってきた大切な関係。恋人は恋を前提に誰とでも付き合える関係。夫婦は契約書を交わし一生を一緒に過ごす、そして皆に認められる関係。
歯ブラシを咥えながらもごもごと語り出す恭弥。

「だからなに、何が言いたいの」

「今ので分からないかい?恋人なんて期間はいらない。幼なじみから夫婦になればいいんだ

「だーーーから!どうしてそうなるのさ!脳みそタワシで磨きなよ!」

朝から勝手なことばかり言って!ああ、イライラしちゃだめよ、肌が余計に荒れる!
歯磨きを済ませ、広すぎる居間で豪華な朝食をとり、並盛中へ登校。(今日も恭弥の頭上で鳥がぴーちくぱーちく鳴いてた)
学校へ到着するのは授業が始まる一時間前だ。シン、と静まり返った校舎にはもう慣れた。
何でも、まず朝の校舎を見回りし、そして登校してくる生徒達の持ち物検査、遅刻の対応など風紀の仕事は朝から山のようにあるとか何とか。
私は授業が始まるまで応接室で待機。簡単な掃除をし余った時間はソファーでうたた寝するのが習慣となってしまった。
恭弥の家へ住む前までは普通に皆と同じ様に登校して、授業を受けて、の毎日だったのだが。はあ、十ヶ条を押し付けられたあの日から全てが変わってしまった。
まあ、風紀委員長の幼なじみという時点で平凡な日々などありえないよね……と、最近はそんなことを考える私なのだった。

「じゃあ、僕は見回りに行って来るよ」

「ん、いってらっしゃい」

恭弥に応接室の鍵を開けてもらい一人で入室。恭弥は鍵だけ開けて中へは入らずさっさと見回りへ行く。
さて、ちゃちゃっと掃除しちゃいますか。
まずは窓を開けて空気の入れ替え。そのまま床を掃き、少し散らばったプリント(抹殺ブラックリスト)を整え、テーブルを綺麗なフキンで乾拭き。
たったこれだけの簡単な掃除だが、少しでも清潔感がある方が気分的にも爽快というものだ。私がこんなことをしなくてもちゃんと風紀委員の人が掃除してるらしいけどね、まあ、気休めということで。
十分で掃除を終え、あとはソファーでごろごろタイム!はあ、この時間が朝の中で唯一ゆっくりできる時間!
また眠気を誘う罠かのように応接室のソファーがふかふかのもふもふでとても気持ちいいのである。
ふおぉぉぉ、ああ、このままお昼まで寝てたいよ。
瞼を閉じ浅い眠りに旅立とうとした時、コンコン、と扉がノックされた。風紀委員の人だろうか。
鍵なら開いてますよ、と声をかけると顔を俯かせ怯える様子のツナくんが恐る恐る扉を開け申し訳無さそうに立っていた。

「ひっ、雲雀さん、あの、おはようございます!それで昨日のことですが」

「ツナくん!おはよ!」

「へ!?あれ、ちゃん?雲雀さんは?」

「恭弥なら見回りに行ってるよ、今は不在でございます、残念でした」

「そっか、はぁ」

思いがけない来客に嬉しさで眠気が吹っ飛んだ。
ツナくんは一年生のときに同じクラスで仲良くしてくれた友達の一人。弱々しそうに見えてやる時はやる男の子!
パンツ一丁になったり京子ちゃんに堂々と告白したり、ツナくん達と一緒にいて楽しい日々を送れた。
そんなツナくんがよそよそしくずっと扉の前で棒立ちしているので、どうぞと中へ招きソファーへ座るよう促すと、俺なんかが座ったら雲雀さんに殺されるよ、なんて言い出す始末。
第一いつも遅刻魔のツナくんがこんな朝早くから学校に来ること事態何かあったとしか考えられないが、どうしたのだろう。
ツナくんに近寄ると肌を見て驚いた。
あちこち傷だらけで痛々しい事この上ない。顔にいたっては目の横が少し青じんでいるではないか。
とりあえず強引に腕を引っ張りソファーへ座らせてみた。

「ツナくん、もしかして恭弥と何かあった?」

「えっ、いや、大したことじゃないんだ!」

「なに、どうしたの」

「……えっと、昨日放課後に友達と話しをしててね、それで運悪く雲雀さんがその話しを聞いてしまったのが事の始まりというか」

「はい?」

「いや、ほんと大したことじゃないから気にしないで!」

「わかった、ごめん。何か無理矢理言わせようとしちゃったね、反省反省!」

ツナくんの困った顔にハッとする。
私が話しを聞いたところで何の解決もできないくせにでしゃばるんじゃなかった、もっと成長しないとなぁ。
恭弥はここで待っていれば帰ってくるよ、と話しを流しティーパックの紅茶を淹れてあげた。温かいものでも飲めば少しは落ち着くでしょ、今のガチガチのツナくんにはもってこいだ。
他愛ない会話で何分かが過ぎ、恭弥遅いね、と文句をたらしていたその時。
やっと待ちわびた彼によって応接室の扉が開かれた。

「あ、恭弥っ……?!?!?アッーーーー!」

「え、十年後の雲雀さん!?」

扉は開かれた、が。

「やあ、久しぶりだね、幼い

「ぶっふぁぁぁぁ!!なんで、なんで!なんでいるの!ど、どどどどうしようツナく、ん」

扉から一歩づつ近づいて来る人に指を指し、私この人苦手なの!ほんとに苦手なの!と小声で訴えてみた。
近づいて来る人とは、スーツを着こなし、顔立ちは大人、背も高い。
未来の恭弥!い、いやああああああ!!
先日、ランボくんのバズーカに当たり十年後の世界で婚姻届を無理矢理書かされた記憶が鮮明に蘇る。
一瞬で背筋がゾっと凍りついた私は気が動転し、横にいたツナくんの腕をぎゅっと握った。

ちゃん、落ち着いて!っていうか、どうして十年後の雲雀さんがここにいるんですか!?」

「ね、ツナくん逃げよ!この場をどうにか逃げよう!」

「こっちの世界でも沢田綱吉は僕からを……気に入らないね。どきなよ」

と意味のわからないセリフと同時にツナくんが壁へぶっ飛び気を失った。容赦無い!

「うわあああ!ツナくんんんんんーーーーーーーー!!」

、君に相談があってわざわざ出向いたんだ。もうあと四分しかない。さっさと答えてもらうよ」

「へ?」

「けどその前に抱きしめさせて」

「ぬぇ!?!うおぎやぁぁぁああああ!!」

私の返事など聞かずに何の躊躇も無く抱きしめてきた未来の恭弥。
うぐぁ!もう、恭弥じゃない、肩幅も胸板も広い広い、完璧大人の男だ、いつも抱き締められる感覚と全然違う!
会うのは二度目だけど、これっぽっちも慣れない!

「ああ、この色気の無い叫び声、まさしくだ、はあ、落ち着く」

「もう色気も何もいらないので、は、離して!」

「ああ、悪かったね。驚いた?」

「驚くも何も、なんですか!いきなり来てツナくんぶっ飛ばして、こんな!」

「それがね未来のキミと三日と二時間半会ってないんだ。いい加減禁断症状が出てね」

今の言葉をどう解釈すればいいのだろうか。
私と会っていなくて禁断症状?はい?

「あの、な、何か十年後であったんです、か?」

「うん。それで相談しにきたんだ。君の意見を聞きたくてね」

「何でしょうか……」

は性欲とかないの?」

「…………………………………………は?」

「僕たち夫婦にもなったのにそういう行為がまだ一度もないんだよね。必ずキミが逃げ出すんだ」

「そんなの、十年後の私に訊いてくださいよ!」

「訊きたくても訊けないんだ。そこで気を失ってる十年後の沢田綱吉が邪魔でと話しすらできやしない」

「ツナくん?」(未来にはツナくんもいるんだ!)

「あまりにが僕をいやがるものだから泣こうがわめこうが力ずくで押さえ込もうと考えてね。それを実行したんだけど、服を剥がして下着に手をかけた瞬間にキミが僕の股間を思いっきり蹴り上げて部屋を飛び出してさ。捜すけどどこにも居なくて翌朝に沢田綱吉の部屋に隠れてるって話しを聞いたんだ。すぐに連れ戻しに行ったけどが嫌がって出てこないとか何とか。
それから今日で三日目、まだ帰ってこないんだ。ひどい話しでしょ。会おうと思えばアジトを破壊すれば済むことなんだけど、さすがにそれをすればが僕を嫌いになるんじゃないかと思ってね。僕、どうすればいいかな?」

知るかーーーーー!!!!!!!

私の将来、 危 険 だ 。うわあ。
そりゃ実力行使で襲われそうになったら誰だって逃げるでしょ、未来の私間違ってないでしょ!
それでツナくんの部屋へ逃げて、あれ、けど私どうしてツナくんの部屋に逃げてるんだろう。ん?近くに住んでるのかな?
よく分からないけど十年後の私、とてつもなくややこしそうな人生が待ち構えてそうだ。
なんだろう、十年たっても恭弥の変わらぬこの強引さ。
あ。
それだ、それだよ、強引な性格を少しでも和らげれば未来の私も考えがかわるんじゃないかな。

「あの、一つ思いついたんですけど」

「なに」

「その力と感情にまかせて!な性格を直せばいいんじゃないでしょうか、恭弥……さん、は昔から強引すぎるのでじゃっかんトラウマになってるのかもしれませんよ、未来の私が。たぶん」

「へえ、そうなの?じゃあ具体的にはどうしたらいいのか教えてよ」

「具体的に!?そ、それは自分で考えてくださいよ!」

「そうか、ようするに優しくすればいいんだね」(じゅうぶん優しくしてるつもりんなんだけどな)

「そうです!優しくです!」

「わかったよ、キミのおかげで希望が見えてきたよ」

「いえいえ、そんな、って!だから!どうしてそうすぐに抱きしめるんですか!こういうのがだめなんですよ!離れて!」

ああ、もうすぐ五分だ、と話しをそらしながら再び力強く抱きしめてきた恭弥さん。
ここまでこの人に好かれる自分が不思議で仕方ない。
私の何に惚れてくれたのか、まあ、また死ぬまでに機会があれば訊いてみよう。
……そういえば!今すぐ訊きたいことが一つある!

「ね、恭弥さん!私も一つ訊いていいですか!」

「なに」

「ほら、あの十ヵ条あるじゃないですか、あれね!十年後も続いてるの!?」

「ああ、あれかい?ふふ、喜びなよ。今は三十ヵ条に増えて…ボフンっ!!

「へ!?」

冷や汗の出るような返事を最後まで聞くことなく辺りは恭弥さんを包み込むように煙と化した。
気のせいだろうか。三十ヵ条、と聞こえたが。なに、二十個も追加されてるなんて、もう、未来が見えないんですけど。
震える手で口を覆いグスっと鼻をすする私の目の前に現れたのは、恭弥さんと入れ替わって私の良く知る現代の恭弥。

、どうしたの。涙目なんてめずらしいね」

「だって……あれ、ちょっと、人の事言えないじゃない!恭弥も涙目、え、どうしたの!?明日は隕石でも降ってくる!?」

「気づけば煙に包まれて知らない部屋にいてさ、すると未来のキミがまた僕を怒鳴り散らしに来たんだ」(しゅん)

未来のは僕を怒ってばかりじゃないか、いい加減にしてほしいよ、と元気なく言う恭弥。
さっきまで大人の恭弥さんを見ていたせいかちょっと可愛く見える。
しかし恭弥の話しからすると、未来の私が恭弥さんに怒鳴り散らしに行った、ということはだ。ツナくんの部屋から恭弥さんのところへ帰ったんだね、きっとそうだ!
はあ、これでしばらくは平和になるといいんだけど。よかったね恭弥さん……(というかもう会いたくない、怖い)

「で、

「ん?」

「どうして草食動物があそこで寝てるの、まさかが?」

「私がするわけないでしょ!十年後の恭弥がぶっ飛ばしたの!」

「へえ。けど、ちょうどよかったよ」

「なにが?」

「今日ね、もう一度咬み殺そうと考えてたんだ」

「は?また暴力!?だめだよ、ツナくん何も悪いことしてないんじゃないの?なのにそんな一方的に」

私の反論に恭弥は溜め息をついた。
何も分かってない、とでも言いたそうな雰囲気を漂わせている。

「いいこと教えてあげるよ。沢田綱吉はね、のことを‘可愛い’と思ってるらしいよ」

「また何言い出すの」

「昨日そんな会話が通りかかった時に耳に入ってね、思わず半殺しにしたけどさ。まだ気が収まらない」

の名前を僕の許可なく出すなんて信じられないよ、と先ほどの涙目から一変し不機嫌な表情で言い放つ。
ああ、そうか、それで昨夜あんなにぎゅうぎゅう抱きしめてきて。
なに、私が恭弥から離れてツナくんの方へ行くとでも考えたのかな。
しかしツナくんもツナくんだよ。本当に私のことを可愛いと言ったのかは知らないが、ちゃんと好きな女の子いるくせにさ。
はっ、理解した!ツナくんはそれを謝罪しに朝早くから応接室に来たんだ!なるほど。

「恭弥、ツナくんはちゃーんと心に決めた女の子がいるから大丈夫」

「知ってる、笹川京子でしょ」

「あらら、知ってたの?」

「並盛のことで知らないことはないよ」

「へ、へえ……」(すさまじい)

「ただ、不安なんだ」

今ゾクっときた。恭弥が不安なんていうと世界が爆破する気さえするのだが。何が不安というのだ。

が、僕以外の男を好きになるんじゃないかって」

「私が?」

「そうさ。だって僕が告白しても断るばかり、不安にもなるよ」

拗ねたように言う恭弥はまるで子供。
頬をつんつん突いてやると、ブスっとした表情でこちらを睨んできた。
そんな私の腰に腕をまわし、ねえ、とねだるような彼は幼なじみのボーダーを超えている。
けど、こうして少しづつ成長していけばいいと思うんだよね。
なので笑顔ではっきりと今の気持ちを伝えてみることにする。

「恭弥のことは好きだよ、ただ、今はそういう関係にはなりたくないから断ってるだけ」

「え……」

「恭弥は大切だしね、なんたって幼なじみだし、なんていうの、家族みたいな感じっていうか」

「家族?そうか、夫婦って自覚してくれてるんだね、そっか、そっかそっか」

「ちょ、また違う意味でうなずいてるでしょそれ!」

、好き」

「だ、だめ!そうやってすぐ抱きつくのやめて!」

「どうして」

「ここ学校だよ?!その、ほら、風紀によくないよこういうの!ましてや恭弥は委員長でしょ!」

「そうだね、じゃあ規則をつくればいいよ。僕たちの十ヵ条に一つ増やそう」

「へ?」

「十一、抱きしめ合う時は周りを確認し、誰もいなければ何をしても、そう、何をしても許される。これでどう?」

「なんかいや……!!!」

そうか、こうして十ヵ条が一つずつ増えて三十ヵ条にまでなるんだね。よーく分かりました。はあ、覚悟しておこう。
恭弥の胸に頬をあずけて少しぐったり。クマが倍増してそうだ。












その頃、ツナ。

(ど、どうしよう、もう意識戻ってるんだけど!話しかけずらい、やばいよ俺、どうすれば)

恐る恐る二人の方を薄目で見てみると、悪い笑みを浮かべた雲雀さんとガッチリ目が合った。
ぎゃああああ!雲雀さん俺が意識戻ってるの気づいてるーーーー……!!!
冷や汗と涙を流し、始業ベルが鳴るのを必死に待つツナなのでした。




*END*






あとがき。
甘い甘い展開がまったくないこのシリーズ。まったり最高。