純血人生 番外編1
極端に冷え込む深夜は布団をかぶっていても寒さを直に感じるほどだ。今日は特に寒い。
リヴァイは仕事が長引いているのか日付が変わっているのに帰ってこない。兵団の中でも調査兵団は急な仕事が多いらしく朝方に帰ってくる事もめずらしくないのだが。おまけに兵士長ともなればその場を最後まで付き添う義務のようなものがあるのだろう。
ただ、こうしてリヴァイのことを考えている時点で「一人はさびい」と心のどこかで感じているのだろうなぁ、なんてぼんやり思う。まるで子供みたいだ。
いたらいたで腹が立つことも多いけれど、部屋に一人でいるよりはいてくれた方がいい。それに何故か一人だと余計寒い。
考えている間も深々と冷え、眠気がくるどころか目が冴えてどうしようもない状態である。何気なく部屋の扉が開かないか見続けたが、やめた。
整えられたリヴァイのベッドを横目に溜め息をつき、そこでハッとした。
(リヴァイの布団……!)
おそらく帰ってくるのは経験からして朝方だろう。おそるおそるリヴァイのベッドから布団を奪い取り自分の物と重ね、かぶり直した。
一枚より二枚の方が断然暖かい、これはいい。手足をこすり合わせると布団の中が先ほどより幾分か暖かくなった。今なら眠れそうだ。
これ以上リヴァイのことを考えることもなく、意識を手放した。
* * *
――苦しい、苦しい、なに、分からない
苦しい夢を見てる?それさえ分からない、ただ苦しい。
そこで眠りから覚めた……はずなのだが、いいや、悪夢を見ている最中かもしれない。
なぜならリヴァイの顔が真正面にあり、不機嫌な表情でこちらを見てくるからだ。
そう、まだ夢だ、夢!……なんて、都合の良い解釈をしても仕方ないのだろうけれど。
「叫ぶなよ」
「リヴァイ……現実だよね」
「ああ、そうだ」
「あの、どうしてリヴァイと一緒に寝てるの私」
「ただいま」
「は?」
「ただいまっつってんだ」
「あ、おかえり。お疲れさま」
「本当に疲れた。で、帰ってくるなり俺の布団が消えてると思ったらお前がかぶってたもんだから呆れて更に疲れた」
「……ああ!ごめん、あまりに寒くて、つい」
「借り一つだ。忘れるな」
「へ、借り!?」
薄っすら寝ぼけていた頭が一気に覚醒した。リヴァイに借りだなんて、そんな恐ろしいことあってたまるか!だ。
「布団はお返しします」そう小声で叫べば、「もう遅い」と軽く頭突きをされた。
最悪だ、リヴァイに借りなど作ったらいつ何を言われるか分かったもんじゃない。それならば私がリヴァイのベッドで服でもかぶって寝よう、だからリヴァイは二枚の布団をかぶってぬくぬくと朝まで寝るといい。これで借りなしだ。
即座に起き上がろうとすれば体が動かないもので、布団の中をのぞいて見れば……。
「あの、リヴァイ、この腕と足は……」
「寒くてな」
私の脇から腕を差しこみ背中に巻きつかせ、足も足で何やら絡んでいる。
そうか、これか、先ほど苦しかった原因は。
「放して」
「うるせぇな、黙って早く寝ろ」
「じゃあこれで借り無……ひっ、ぎゃああああ!」
「どうした」
「苦じっ、リヴァイ!やめて!痛い痛い痛い!」
骨がきしむほどに腕に力を入れてきた。
(呼吸が、呼吸ができない!この馬鹿力め!)
「……分かった、分かった!借りは借りでいいから、力弱めて!」
「よし、おやすみ」
(バーカ!バーーーカ!悔しい!)
*END*
強引兵長!でした!
ほんのり楽しんでいただけたのなら、とっても嬉しいです^^