不に幸2





今日は固定ベルトを装着しての初の訓練であった。
訓練といっても立体機動のバランスを保てる素質があるか試すものであり、特設されている木枠中央に立ち、両側の腰にロープを繋いでぶら下がるだけのいたって簡単な訓練である。
まず、固定ベルトの装着方法として教官の手本通り身体へ装着していくわけだが、これが痛い上に苦しいのなんの。少しくらい緩めてもいいかな、なんて甘いことを考えていると、初めのうちは吐くほどきつく締めておけ!と恐ろしいセリフがどこかから聞こえてきた。教官は訓令兵の考えなど手に取るようにお見通しのようだ。
近くにいた者に顔が真っ青だと指摘されながら木枠中央へ立ち両側の腰にロープを繋ぎ終えると、徐々に身体が宙へ上がっていく。同時に固定ベルトが更に身体を締めつけた。
足が地より離れる寸前、あまりの痛みと苦しさにふと視界が歪むと、次は後頭部に激痛が走った。どうやらバランスを崩した身体が後ろへ回転し、後頭部を思いきり地へ打ちつけたらしい。
意識が朦朧とする中でまぶたを薄く開けると、情けない格好をさらしたせいか皆の視線が自分へと集まっていた。これは恥ずかしい事態である。
どうにか上体を起こそうと足を大きく振るが、途中まで起き上がったものの、勢いが足らずまたしても後頭部を地へ打ちつける始末だ。
見兼ねた同期の仲間が手を貸してくれたおかげで何とか起き上がることができたが、教官がこちらを睨みつけていることに気付き心臓が破裂しそうになる。ああ、最悪だ!
同期の訓練風景を見ていると、個人差はあったが皆が大概上手いこと宙でバランスを保っていた。これは頭一つ飛び抜けて私に素質が無いということだろうか。……いいや、まだ始まったばかりだ。もっと集中して次こそ成功させなければ。
次の順番に備え宙に浮くことを想像しバランスの取る練習をしていると、「ぐふぇっ!」と何かがつぶれるような悲鳴が聞こえた。
先ほどの私と同様に皆の視線が一人の訓練兵に向いており、そこにはバランスを保てず前へ回転してしまったのか顔面を地へ打ちつけているハンちゃんがいた。
笑いながら飄々と上体を起こすハンちゃんときたら、額と左の頬から血がにじみ出ているではないか。本人より周囲にいる者があわててしまい、皆に血が出ていると顔を指差され事の事態に気付いたようだ。しかし手の甲で適当に血を拭うだけで、医務室へ行こうとしない。
それどこか順番を待つ私の元へ駆けてきたので、思わず血で汚れたハンちゃんの手を掴み、教官に断りを入れ医務室へ直行した。

「ちょ、!こんな傷平気だよ?」

「血が出てるのに平気なわけない!ちゃんと手当てしてもらわないと!」

「大袈裟だなぁ……まあ、ちょうどいいか」

「なにがちょうどいいの?」

「ああ、今のは独り言。気にしないで」

気になる言い方をされ、教えてよ、あとでね、今、あとで、と繰り返し言い合いをしていれば、宿舎より少し離れた棟へ到着した。
入口から一番手前の部屋が手当てをしていただける医務室だと教わったのを覚えている。
扉の向こうに誰が待っているのか予想もつかず、緊張の面持ちでノックをした。だが、何の返事もなく静まり返った廊下にノックの音だけが響く。
不在なのだろうか。ドアノブを回してみるとカギはかかっておらず扉が開いた。
失礼します、そう声をかけ入室する。さすが医務室なだけに薬品の匂いが鼻につき何やら別世界のような感覚に陥った。
とりあえずハンちゃんを椅子に座らせ、手当てをしていただける方を捜してくると伝えると、「がしてくれればいいでしょ」なんて無茶な返事を返され固まってしまう。
ふと棚にずらりと並ぶ薬品を見てみるが、冷や汗しか出てこない。

「あの、ハンちゃん。私薬品に関しては全く無知なの。どれが消毒液かもわからないし」

「そこの棚の二段目手前右端にある白い瓶。それが消毒液だよ」

「へ、あ、はい」

「小さな布に液を染み込ませて消毒してくれればいい。あ、その前に水で傷口を洗い流さないとね」

「は、はい。水ね!水水!」

何故か的確なハンちゃんの指示に従い、傷口の消毒はあっという間に完了した。
幼なじみの頼もしい知識に感激するばかりである。
傷口に清潔なガーゼを当てテープで貼りつけていると、ハンちゃんは私の固定ベルトを指で引っ張ってきた。

「やっぱり。、これ締めつけすぎだよ」

「でも教官は吐くほどに締めておけって、ちょ、苦しいから引っ張らないで」

「吐くほどって言ってもある程度だろう?ここまで身体に喰い込む締め方をしてたらそりゃあバランスも取れないはずだ」

「だって……。それに、バランスはハンちゃんだって」

「あんなの簡単すぎてわざとバランスを崩してやったんだ。前もってメガネも外しておいたから無事だよ」

「はい?わざと!?」

があまりにも恥ずかしそうな顔をしてたから、私がもっと派手に転んでやろうと思ってね!別に笑い者にされようと私は気にならないし」

そう言いながら手早く固定ベルトを緩めてくれた。
今の話、事実なのだろうか。まるで、このような傷を作ってまで私をかばってくれたように聞こえたが……。
ハンちゃんの額と頬にカーゼを貼り終えると、次は私が力任せに椅子へ座らされた。訳が分からぬまま後頭部を探られ、ハンちゃんは溜め息を吐く。

「あーあー、予想通り。こそ手当てしないとね。もう固まってきてるけど血が出てるよ?後頭部から」

「うそ!?」

「はあ、早めに医務室へ来れて本当にちょうどよかった」

打ちどころが頭なだけに、どっちにしろ後で連れてこようと思ってたけど、そうハンちゃんはつぶやく。
先ほど、ちょうどよかったとつぶやいていた意味は、このことだったのだろうか。
手際良く布地に水を含ませ後頭部へ当ててきた。後頭部の痛みが麻痺していたのか何なのか、傷口を拭かれる度にぴりぴりと痛みが増してくる。
痛い、はい我慢、痛いって、我慢だ我慢、などとまたしても繰り返しの言い合いをしているうちに手当ては終わった。
頭部はテープを貼ることが出来ないとのことで、軽く包帯を巻かれたのだが、窓ガラスに映った自分が大けがをしたように見え頬が引きつってしまう。
顔面にガーゼを貼りつけているハンちゃんと、頭部に包帯を巻く私。訓練場へ戻れば二人して皆の視線を集めるはめとなった。

初日に引き続き散々な訓練を終え、手早く夕食を済ませた。余った時間を活用し、お手洗いの個室にて全裸になり濡らした手ぬぐいで全身を拭いていく。今夜も風呂へ入る番ではないので、拭き取るしかない。
その際、胸の上と脇腹、それに両足の太ももが固定ベルトにすれて皮膚がめくれていることに気付く。水ぶくれになっている箇所もありゾッとした。
明日も固定ベルトを締めなければならないのに……これは痛みを覚悟しておくべきだろう。
重い溜め息を吐きながら部屋へ戻ると、同室の仲間達は明日の準備をする者、談笑する者、就寝時間を待たずして既に眠っている者、皆それぞれであった。
ベッドで横になり本を読むハンちゃんを笑いながら奥へと押しやり、私も寝転ぶ。一つのベッドに二人、やはり狭いが仕方ない。

「お帰り!そろそろ就寝時間だね」

「うん、今夜もぐっすり眠れそう……ふぁー」

私があくびをすると、ハンちゃんもあくびをする。あくびが移った!そう笑うハンちゃんの顔はケガをしているせいで痛々しく見えた。
寝る前にガーゼを新しいものに取り替えるか聞けば、「大丈夫だよ、ありがとう」と優しい声色で返事を返され原因元が自分であるだけに胸が痛む。

「本当に大丈夫?」

こそ、後頭部の痛みはどう?」

「ああ、平気平気!私よりハンちゃんだよ」

「いやいや、私よりだろ。頭を打ってるんだから」

「ハンちゃんだって額を打ってるでしょ」

「あはは!もう、きりがないなぁ……ふふ!」

そこで消灯時間の鐘が鳴り響いた。
同期の一人がランプの火を消し、皆ベッドへと入っていく。室内は一気に静まり返った。
私とハンちゃんもおやすみの挨拶をし、まぶたを閉じる。すると、数秒も経たないうちに背後より腕が伸びてきた。ハンちゃんの腕だ。
小声でどうしたのかと聞くと、抱き枕が欲しくて、などと言われたので腕を軽く叩いてやった。おそらく、まだ眠たくないから構ってくれとのメッセージだろう。
もぞもぞ動くハンちゃんの手に笑いを堪えていると、固定ベルトですりむけた箇所に当たってしまい、小さな悲鳴をもらしてしまった。
その声をハンちゃんが聞き逃すはずがない。

「どうしたの?どこか痛いの?」

「ちょっと、すりむいちゃって。ごめんごめん。気にしないで」

「は?どこをすりむいたの!?」

「しー!しー!もう皆寝てるから!」

私に注意されたハンちゃんは口を閉じた。かと思えば、手が私の寝巻の中へと侵入し、遠慮なく上半身を好き放題撫でまわしてきた。肌の確認をしているのだろうが、あまりのくすぐったい行為に声が出そうになるのを必死に抑える。

「ちょ、ハンちゃ……ん!」

「しー、静かにしないと皆寝てるよ?」

「それさっき私が言ったセリフ!」

小声で会話をしていると、手は胸の上部分で止まった。
勘の良さから「固定ベルトがすれたの?」と見事予想を当ててくる。
そのまま固定ベルトが身体を締めつける箇所をなぞられ、痛みから身体をよじらせた。呆れるように溜め息を吐いたハンちゃんは、身体を起こし何やら荷物を漁りだす。
そして私の寝巻を捲し上げ、手に持った小瓶からクリーム状の何かを指ですくい取ると、すりむけた皮膚へと塗り込んできた。

「これ、良く効くから」

「薬?」

「うん。ごめんね、早く気付いてあげられなくて」

「いや、いやいや、どうしてハンちゃんが謝るの」

は痛いとか、辛いとか、弱音を吐くのが下手だから、私がいち早く気付かないと駄目なんだ」

「待って、そこまで気にかけてくれなくても大丈夫だから!それに結構言ってると思うよ?痛いとか、辛いとか」

「はいはい、ならそういうことにしておくよ」

今ものすごく適当に流された気がするが……。
ただ、丁寧に薬を塗り込んでくるハンちゃんの手は、とても心地良かった。優しく、あたたかい指先に眠気が押し寄せてくる。
薬などより深く癒しを与えてくれる幼なじみの存在に心が安らぎ、意識を手放した。

翌日、案の定固定ベルトの装着には大苦戦であった。ハンちゃんの塗り薬も虚しく、すり傷、水ぶくれが強烈に痛み固定ベルトが拷問器具のように思えてしまう。だからと言って緩めて装着するわけにもいかないので耐えるしかない。
一歩を踏み出すたびに太ももの固定ベルトが摺れ、血の気が引いた。更に、本日も昨日と同様に立体機動に向けてのバランスを取る訓練だ噂で聞いた。全体重が固定ベルトにかかってくると考えるとゾッとする。
青ざめた顔で宿舎を出ると、甲高い鐘が鳴り響いた。訓練が開始される五分前の合図である。本日の集合場所へと皆がいっせいに駆け足で向かった。教官が来る前に整列をしなければ、怒声から一日が始まってしまう。
私も同様に駆け足で集合場所を目指すが、固定ベルトがすれて、すれて、あまりの痛みに涙の代行として気持ち悪い笑顔が浮かび上がってくる。
(痛くない、こんなのどうってことない、痛くない痛くない!)
こんな私でも一応は兵士を目指しているわけだ。これぐらい耐え抜いてみせる。
隣を走っていたハンちゃんに顔が怖いと指摘を受けたが、そのまま気持ち悪い笑顔で誤魔化しておいた。
集合場所へ整列してから数分後、本日の訓練について教官より説明があった。昨日にバランスを取れず惨めな姿をさらした者のみ木枠前へ集合、合格した者は別メニューをしてもらう、とのことだ。
教官の遠慮の無い言い方に前者の私はドキリとし、痛いだのなんだの弱々しいことは言ってられない、そんな気にさせられた。今日こそは成功させなければ。
訓練についての説明が終了し、私とハンちゃんを含む数名の者が木枠前へと集合する。
今朝、朝食をとっている際にハンちゃんが教えてくれたアドバイスの内容を頭の中で繰り返し順番を待った。空中で手足をばたつかせてバランスを取ろうとするのではなく、全身の固定ベルトがどのように締めつけてくるのかを把握する。その流れを読み取れれば、どうすれば姿勢を保っていられるか自然とわかってくる。
前に並んでいる者が次々に合格していく様子を見ていると妙な緊張が押し寄せてきた。次で番が回ってくるところで、後ろに並ぶハンちゃんが背中を軽く叩き緊張をほぐしてくれた。……よし、成功してみせる。
木枠中央へ立ち両側の腰にロープを繋ぎ終え深呼吸をする。教官の合図と共に足が地より離れ宙へ浮いた。
昨日と同様に後へ体重が傾き回転しそうになったが持ち堪えた。固定ベルトの締め付け方を把握、把握……把握……どうやって!?
ただ締めつけられているようにしか感じない。把握することに焦っていると、またしても後ろへ回転しそうになってしまう。思いつくままに足をくの字型にし、両手を正面へと勢い良く突き出した。体重の重心を前に持ってくることで何とか体勢で保てることに気付く。少々恥ずかしい格好だが、この際どうだっていい。
前方でハンちゃんが腹を抱えながら笑っているが、気にするな、気にするな。
「……もういい、下ろせ。不格好な様だが、まあ合格にしといてやろう」との教官の言葉につい頬が緩んでしまう。何はともあれ合格したようだ。
次はハンちゃんの番である。昨日、医務室で簡単すぎると言っていたが、あの言葉は事実なのだろうか。
木枠外へと出て宙に浮かぶハンちゃんを見れば、何故か教官に見えないよう顔を背け肩を震わせていた。一体どうしたというのか。しかし良く見ると腹を抱えて笑っていることに気付き唖然である。「の空中での格好、くっ……やべぇ、可笑しすぎぶはっ」と独り言まで聞こえてくる始末だ。
教官に集中しろと怒られていたが、空中で思い出し笑いができるほどハンちゃんには余裕があるらしい。

夕食後は心待ちにしていた数日ぶりの入浴である。
私が空中で不格好なバランスを取ったこをと一日中笑っていたハンちゃんを食堂へ置き去りにし、さっさと風呂場へ向かった。
昼食中など食べ物を口に含めたまま正面に座っていた私の顔へ噴き出し、一瞬場が静まり返ったほどである。いくらなんでも笑いすぎだ。
私は空中でバランスを取ろうと必死だったのに。その姿を一日中笑い続けるなんて。
久々に幼なじみへ湧いた怒りは、扉を閉めるにも、服を脱ぐにも、何をするにも動作を荒っぽく乱暴にさせた。
だが入浴で浴びた湯水は強打した後頭部の傷と固定ベルトですれた傷に容赦なく沁み、そこだけは丁寧に手ぬぐいで水気を拭う。
傷口に当たらないよう下着と寝巻を着用し、部屋へと戻った。途中、廊下でハンちゃんが手を振りこちらへ駆け寄ってきたが、目を逸らし無言で通り過ぎる。当然だろう、少しは反省する姿を見せてほしいものだ。
部屋で髪を乾かしながら、同期の仲間と会話をしているとハンちゃんが戻ってきた。濡れた髪の水気を拭きもせず、風呂上がりと言うより雨にうたれたかのような姿に皆の視線はハンちゃんへと集まる。顔をうつむかせ扉を開けたままたたずむハンちゃんへ同期の一人がどうしたのかと声をかけるが顔を上げようとしない。
そこで名前を呼ばれた。「、こっちへ来て」と。
皆の視線がハンちゃんから私へと移り、言葉を無視することもできず扉前へと歩み寄る。正面まで行くと手首を掴まれ部屋から引っ張り出された。そのまま廊下を早足で歩き、宿舎のベランダで足を止める。

「……、怒ってるよね」

「……だって、ハンちゃん笑いすぎだよ。不格好なのは自分でも分かってたよ、でも私は真剣だったの」

「あれは!必死に頑張るが小動物みたいに見えて、こう、笑いが込み上げて止まらなかったんだ!」

「しょ、小動物……」

「もう私の顔も見たくない?嫌いになった?どうしたら許してくれる?何をすれば機嫌を直してくれる?」

じりじりと迫り寄られ無意識に後ずさりをしていると、ベランダの手すりに背が当たり横へ踏み出そうとすれば両肩を掴まれてしまう。
鼻が触れ合いそうな十センチほどの距離。真正面から潤んだ瞳で目を見つめられ、少なからず焦った。
ふと視線を逸らすと、昨日ハンちゃんがわざと強打した額と頬の傷に目が止まった。風呂上がりのせいか濡れた髪が傷口に張り付いており、心が痛む。
私が恥ずかしい思いをしないようにと、ハンちゃんの優しさからできてしまった傷……。
首にかかっていた手ぬぐいを外し、ハンちゃんの髪を拭いてやった。

「へ、どうしたの」

「さっさと髪を乾かして額と頬の手当てをしないと。もうすぐ就寝時間だよね?急げ急げ」

「髪なんて放っとけば乾くよ、それよりの機嫌を」

「なにもしなくていい。さっきは冷たい態度をしてごめん。ハンちゃんが笑い出すと止まらないって幼なじみの私が一番知ってるはずなのにね」

「駄目だ、何でも言って!土下座でも、殴り飛ばしたいなら殴ってくれればいい、喜んで受け止める!さあ、さあ!どうぞ!」

「ひい!深刻な顔しておいて鼻息が荒いってどういうこと!……もう、じゃあ、これで許す」

思いきり抱きつき、脇腹をくすぐってやった。声を上げて笑うハンちゃんに私も笑顔になる。
くすぐったさに耐え切れず尻もちをつくハンちゃんにを更に攻めやった。これで今日の怒りは全て消化だ。
やめて、やめて、そう声を荒げる幼なじみの姿を見ていると、ベランダがつい先日まで私達の遊び場であった原っぱに思えてくる。
そこで就寝時間の鐘が鳴り、急いでハンちゃんを立たせ、走りながら尻の汚れを掃ってやり部屋へと戻った。教官に見つかれば一大事である。
ひとまずベッドへと寝転がり皆の寝息が聞こえ始めた頃、ハンちゃんの額と頬を、私は後頭部と固定ベルトですれた傷を月明かりだけを頼りにお互いの手当てをした。
再度ベッドへ寝転がると、力強く抱き締められた。甘えるように首元へ顔を埋めてくるので、頭を撫でてやる。
すると、今日はごめん、と弱々しい声で謝罪の言葉が告げられた。

「……気にしなくていいよ、もう何とも思ってないから」

「ちゃんと謝ってなかったから、いつ言おうかずっと考えてたの」

「そっか……。さあ、明日も早いしそろそろ寝よう」

「うん、おやすみ」

抱き合ったまま朝まで眠る私達は、仲の良い幼なじみである。
同室で生活を共にする仲間達の視線など、気にさえしていなかった。







*NEXT*







-あとがき-
不に幸第二話、ご覧いただきまして誠にありがとうございます!
少しずつ少しずつ危険な香りをさらけだしていきます。笑
次回はハンジさんが……とある行動にでます。