純血人生 18





一人の朝を迎えた本日は、少々雲行きの怪しい曇天の空である。
いつ雨が降りだしてもおかしくない空にあわててベッドから飛び起きた。これは早めに洗濯を済ませておくべきだと数年の勘が語りかけてくる。
冷たい水で顔を洗い、寝巻から仕事着に着替え、寝ぐせのついた髪は手ぐしで整えながら部屋を出た。
朝食もとらずに井戸の真横で汚れた衣類を必死に揉み洗い、驚くほど大きな洗濯カゴへしぼった洗濯物を積み重ねていく。山積みとなったところで、一度洗う手を止め洗濯カゴを底から持ち上げた。そして宿舎横に設けられた庭へ洗濯物を干していく。鳥のさえずりと兵士達のかけ声が混じり合う中でこの行動を何度も繰り返すのが私の日課だ。

三度目の往復を終えた頃、時折り顔を見せる太陽は傾き始めており昼の時間を過ぎていることに気付いた。
時間が経つのは早いものだ。
先日倒れたリヴァイだが、体調は二日もせずして回復した。
しかし早く回復するのも考えものだ。疲労とはいえ病み上がりに近い体調だというのに、同日の夜、時間が惜しいと言わんばかりに班の部下を引き連れ旧調査兵団の古城へと馬で掛けて行ってしまったのだ。
明後日に壁外調査を控えている為、本日中には帰還するとのことだが。私としては、また倒れるのではないかと考えてしまうもので。いいや、余計な心配だろうか。
最後の一枚を干し終え、空となった洗濯カゴを溜め息を吐きながら両手で抱えた。
(まあ、最高の部下が近くにいるわけだし、大丈夫でしょう)
いつも通り平然とした姿で帰還する様を想像しながら、四度目の洗濯を開始するべく井戸のある方へ歩いた。
宿舎の角を曲がったところで、女性兵が一人こちらに向かい歩いて来る。両者頭を下げ軽く礼をするだけで言葉を交わすことは無いが、その表情は少々悲しそうであった。
何気なく不安がよぎり、思わず足を止めて遠ざかる女性兵の背中を見つめていると、聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
声のした方を振り向くと、こちらに向かい手を振るナナバさんがいた。宿舎の木陰に腰掛け、壁に背をあずけている。
小走りで近くまで行くと、私が両手で抱えている洗濯カゴをまじまじと見てくる視線に気付き、「これは皆さんの衣類を洗って運ぶ洗濯カゴですよ」と告げてみた。その言葉に頭を縦に振りながら優しい笑顔を向けられ、私も笑顔で返す。

「ナナバさんは、休憩中ですか?」

「ええ、今も班の皆は明後日に向けて作戦の再確認中なんですけど……私だけ少し休憩中です」

そう言いながら細かい文字がびっしりと書き込まれた作戦書を片手に持ち、頭を冷ますかのように扇ぎだした。
端正な横顔は疲れているようにも見えたが、やはりナナバさんは綺麗だ。何故か疲れている表情も絵になる。
肩でも揉みましょうか、と思いついた言葉をかけたが、女性にそのようなことを頼むわけにはいきません、などと紳士らしい言葉を返され無性に叫びたくなった。
(いつもの誰かさんと全然違う……!)
ナナバさんの心には花が咲いているのではないだろうか。さすがは調査兵団一人気のある人だ。今の一言だけで、皆から愛される理由が改めて分かった気がする。
とてつもなく感心の意を放っていると、ナナバさんはこちらを向くなり、「こういう言葉をサラッと言うのがいけないのかな」そうつぶやいた。
どういう意味だろうか。何がいけないというのか。

「以前からですが、壁外調査の目前になると想いを告げられることが増えまして……」

「あ、もしかして先ほども想いを告げられてました?」

私の質問に、ナナバさんは眉を垂れ下げてうなずく。
なるほど、女性兵が悲しい表情を浮かばせていた理由が分かった。

「私が断るたびに、無理な笑顔や悲しそうな表情を向けられ、時には泣きだしてしまう女性もいる。正直、辛いです」

「ナナバさんは素敵な方なので、特別に人気者なんです。とはいえ、人気者には人気者の辛さがあるんですね」

私なんて何も無いですよ!と笑いながら言えば、ナナバさんは顔を引きつらせた。
さんの場合は想いを告げたくても告げられない者がほとんどですから、そう小声で返され首をかしげるしかなかったのだが。
何にせよ、ナナバさんは誰とも深い関係にならないことも有名なので、それを承知の上で皆、想いを告げているのだと思う。
壁外調査の目前というのも、悔いの残らないように、との思いも込められているに違いない。

「……すみません、突然変な話をして」

「いえいえ、何でも遠慮無く話してください」

「遠慮無く……あ、そう、さんに一つ聞きたいことがあったんです」

「はい、なんでもどうぞ!」

さんって何者ですか?」

「は?」

「先日、地下街へさらわれましたよね。あの事件から、何かが引っかかります」

「はあ、なんでしょうか」

「駐屯兵団の兵服を身につけてさらいに来るなんて、以前から計画を立てていたとしか思えません。手口が凝り過ぎている」

ミケに聞いても何も教えてくれないし、と付け加え真剣な表情を向けられた。
今の話を聞き、私は別の意味で驚いている。ナナバさんには既に私の素性を知らされていると思っていたからだ。
私がどこへさらわれたか検討がつかない中で、手分けして様々な場所を捜したのだと後でハンジさんから聞いたのだが。その中にナナバさんも入っており、見世物小屋を片っ端から捜してくれたとのことだ。
まさか、何も知らずに行動していたのだと考えると……。

「ナナバさんは東洋人という人種をご存知ですか」

「東洋人?もちろん知ってますよ。賊の間では高く売っ……え、もしかして」

「ええ、お察しの通りです」

「そういうことですか」

「同じ人間なのに高く売れるだの何だの、意味不明ですよね」

会話が途切れ、沈黙の間がおとずれた。何故か妙な焦りが湧きだし心臓が高鳴りだす。
私が東洋人だと知って引いてしまったのだろうか。それとも、もっと早く教えておけと腹を立たせているのではないだろうか。
不安な気持ちを抱えながら横を向くと、こちらを見据える無表情のナナバさんと目が合い、耐え切れずに視線をそらしてしまう。
見られていた、すごく見られていた。

「……大切な素性を、私などに話して良かったんですか」

「あ、秘密にしているわけでもないですし、いいんです」

「ダメですよ、もっと自覚するべきです。また同じ事件が繰り返される可能性だってある」

「……おっしゃる通りです。すみません」

「よっぽどの理由が無い限り、自分の素性を明かさないこと」

にぎりしめていた拳を持ち上げられ、折り曲げていた指を伸ばされる。そして小指を小指で絡ませてくるなり、「約束ですよ」と言いながら笑顔を向けられた。
不覚にも、あまりに綺麗な笑顔のため見入ってしまい何度もうなずく始末である。
ナナバさんはゆっくりと離した小指を見つめながら何かをひらめいたように、再びこちらへ視線を向けてきた。

さんの素性を知ったことだし、もっと親しくなりたいな」

「親しくですか?」

「そう。まず話し方、気楽に話してみて。です、ます、の敬語はやめよう」

「分かりました。ナナバさんがそれを望むのでしたら」

「分かりました、って全然分かってないでしょ。気楽に気楽に」

「ああ!ごめんなさい」

「ごめんなさい、じゃなくて。ごめん、でいいの」

「ぬぁぁ!なかなか難しい……!」

即座に対応できない頭を抱え、変な叫び声を響かせる私を目の当たりにしたナナバさんは、声を上げて笑いだした。
そんなナナバさんが突如として、「髪を触ってもいいかな」などと聞いてきたもので、「いくらでもどうぞ」と返事をした。まさか、ホコリでもついているのだろうか。
私の返事と同時に髪をすくい上げられ、指にくるくると巻きつけ始めた。かと思えば頭上から毛先までを指で梳いたり、三つ編みをしたり、まるで私の髪で遊んでいる。
その間に言われたセリフが、「以前から触れてみたかったんだ、綺麗な髪だね」これである。
もし、ナナバさんに少しでも気のある者が今のセリフを言われたのなら、確実に落ちているだろう。そうでなくとも少なからず照れてしまうに違いない。今の私がそうである。
火照る顔を隠すように、私も手を伸ばして豪快にナナバさんの髪へ触れた。私の髪質とは異なり、とても柔らかい毛が指にからんでくる。おまけに髪色が金色であり、曇り空の下であろうと宝石のごとく素敵な色を放っていた。

「ナナバさんの髪、性格がそのまま出てるよね」

「そうかな」

「ふわっとしてる、ふわふわーって、とっても優しい感じ」

ジェスチャーでナナバさんの髪質がどういうものか表現する私を呆然と見るなり、しばらくして腹を抱えながら笑いだした。
「自分の髪を表現されるなんて初めてだよ」と目に涙をためながら再び私の髪を指にからめる。

さんの髪には負けるね。ここまで綺麗な髪を持つ人は少ないだろう、それに……」

いい香りがする、と髪を鼻につけて匂いを嗅がれた。
その行為によって顔の火照りは最高潮となり、何が何やら、自分でも理解できない言葉を口走ってしまう。

「いい香りって、汗ですよそれ!汗です汗汗!もう朝から洗濯で走り回ってたから汗がバーンです!」

「また話し方が元に戻ってる」

「話し方とか、それどころじゃなっブヘッ!

途端、何かが上から降ってきたようで、私の頭から顔面にかけて勢い良くへばりついた。
少々異臭の放つソレをおそるおそる取ると、なんと湿った雑巾であった。
ナナバさんと二人で上を見上げれば、頭上より少し離れた三階の窓からこちらを睨んでくる人物と目が合い、ふつふつと怒りが湧き始める。

「……なんで、なんでリヴァイがそこにいるのよ!」

「一時間ほど前に帰還してな」

「いつの間に。で、この雑巾は何」

「窓掃除をしていたら落とした」

(ウソだ、絶対ウソだ!)

私達が座っている場所の真上に窓があるなら少しは納得もするが、左へずれた数メートル先に窓がある。
どう考えてもこちら目がけて、わざと投げたとしか思えない。
なにより普段使わない宿舎にどうしてリヴァイがいるのだ。「そこにいる理由を言え!」と荒々しく叫べば、「何気なくここへ来たら、たまたま窓が空いててな。下を見たらお前らがいたんだ」とのことである。どこまでタイミングを重ねてくる気だ。
わなわな震えていると、リヴァイが窓から身を乗り出し近くの木へ飛び移った。階段を駆け下りるかのように、軽々と枝を飛び移っては地上へと下り立つ。
以前のエレンといい、ハンジさんといい、兵士の身軽さに驚かされるばかりだ。とはいえ、意外と元気そうな顔色に心配していた気持ちが和らいだのは黙っておこう。
見事余計な心配をしていた私と、隣で尻を掃いながら立ち上がるナナバさんに、「二人のガキを知らないか」と聞いてきた。

「子供?兵舎内に子供がいたらびっくりでしょ」

「俺の班が帰還する際、門が開かれた瞬間をつかれてな」

「中へ入ってきたの?子供が?」

「ああ、そういうことだ」

「分かった。見かけたら連絡する」

「たのむぞ」

私の手から雑巾を奪い取り、どこかへ行ってしまった。
雑巾を持って子供を捜す意味が分からない。ついでに掃除もしながら捜し回っているのだろうか。おいおい、どこまで綺麗好きなのだ。
私が顔を引きつらせていると、ナナバさんは薄く笑いながら再び腰掛けた。

「今、思いきり睨まれたよ」

「へ、リヴァイに?」

「うん、あんな目つきを私に向けてくるなんて」

苦笑いを浮かべながら空を見上げるナナバさんときたら、どこか儚げで。それに加えて肌が透き通るように白いせいか、消えてしまいそうな雰囲気に少し怖くなってしまう。
ナナバさんが睨まれたら次は私がリヴァイを睨み返します、などと冗談を言えば少しだけ笑ってくれた。
さて、いつまでものんびりしていられない。そろそろ洗濯を再開しようと大きな洗濯カゴを杖代わりに立ち上がる。
すると、足音が近づいてくることに気付いた。みるみるうちに足音は大きくなり、宿舎の角から二つの小さな陰が姿を現す。
あっという間に距離を詰められ、一人ははナナバさんの腕を掴み、もう一人は私の足にしがみついた。……なんというか、小動物のようで可愛い。
おそらくリヴァイが捜していた子供達だろう。

「ボクのしつもんに答えて!」

「はいはい、どうぞ」

「父ちゃん、どこ!?教えてくれないと、かみつくからな!」

「噛みついたらお尻ぺんぺんするからね!それよりも、父ちゃんって……その父ちゃんの名前は?」

「ネスだ!」

ナナバさんと目を見合わせ、ネス班長の子供!?と声を上げてしまう。
馬をこよなく愛すネス班長に子供がいたとは、初耳である。しかも二人。
父に会いたいが為に兵舎まで来たというのか。自宅がどこかは不明だが、何にせよとても危険な行為である。
ナナバさんに、子供が見つかったことを知らせてくるね、と小声で告げその場から離れようとするが、力強く足にしがみついてくるもので引き放すこともできない。
すると、ナナバさんが長方形の作戦書を正方形に引きちぎり、手慣れた様子で折り始める。
何を折っているのか見ていると、次第にそれは形となり、馬に変身した。
私の足にしがみついていた子供へ手招きをし、馬となった作戦書を手のひらに乗せてやる。子供達は歓喜の声を上げ、なんともいい笑顔を見せてきた。
……いいや、感心している場合ではない。早くリヴァイへ連絡しないと。
その場から数メートル走りだしたところで、ペトラがこちらへ走ってくる姿を見つけた。絶妙なタイミングである。

「ペトラ!もしかして、子供を捜してる!?」

「ああ!!久しぶりって、今はそれどころじゃなくて!そうなの、私達が帰還したのと同時に入ってしまったらしくて」

「見つけたよ、ほら、ナナバさんと折り紙してる」

「へ、ナナバと……あああ!」

ネス班長の子供であることも伝えると、案の定ペトラは驚く表情を浮かばせた。しかし速攻で気持ちを切り替えネス班長を呼びにその場から駆け出す。
数分後、ペトラはリヴァイ班の皆を引きつれて戻ってきた。
どうやらリヴァイ班全員で兵舎内を捜し回っていたようで、皆息切れ状態である。
ネス班長は、壁外調査へ向けて新兵に作戦を叩き込んでいる最中らしく、終わり次第駆けつけるとのことだ。
その間どうか子供達をお願いします、ネス班長の伝言らしい。
オルオが「ちょろちょろ逃げ回りやがって!このクソガキが!」などと野蛮な声を上げると、子供達はナナバさんの後ろへと隠れた。
ペトラはオルオの脇腹を肘で思いきり殴り、子供達に見えないよう木の陰へと蹴り飛ばす。なんと手際の良いことだろう。

「おいガキ共、何も怖がることはない」

「「ひぃぃ!!」」

(……うわあ、何もしてないのに怖がられてる)
子供受けの悪い顔なのだろうか、リヴァイの顔を見た途端、ナナバさんへ必死にしがみつき幽霊でも見たかのような表情を見せつけてきた。
そんなリヴァイを押しどけるようにフードをかぶったエレンが子供達へ笑顔で近付く。

「なあ、お前ら。兄ちゃん達と遊ばないか?」

「あそぶ?」

「ああ!お前らの父ちゃんが来るまでの間、一緒に遊ぼうぜ!」

エレンの明るい声に子供達はナナバさんの後ろから飛び出てきた。「あそぶ!」と笑顔で声を上げながら。
それを良いことに、ナナバさんは立ち上がり、私の前へと歩み寄ってくる。

「私は戻るよ。長く休憩をとりすぎた」

「ナナバさん。あまり無理しないでね」

「ありがとう。では、子供達をよろしく」

丁寧にリヴァイ班の皆に頭を下げ、その場から遠ざかる……のかと思いきや、何故か木に足をかけ軽々と登っては三階の窓から中へ入って行った。
(……それで三階の窓が開いていたのか!)
調査兵団に階段は必要無いらしい。
その間にもエレンは子供達の名前を聞きだしていた。どうやら兄妹らしく、兄の名前は「ガル」、妹の名前は「モコ」と恥ずかしそうに名乗った。
可愛い素振をしながらも、きっちり自分の名を言えたことにエレンが二人の頭を撫でてやる。エレンもまだ子供だが、今回ばかりは大人びて見えた。

「ガル、モコ、何か好きな遊びはあるか?」

「隠れん坊はどうだ」

突然聞こえた声に、リヴァイと私以外の全員があわてて敬礼の体勢をとる。
軽くストレッチをしながらこちらにへ歩いてくるのは笑顔を浮かべるエルヴィンだ。

「団長!お疲れ様です!」

「ああ、お疲れ様。ネスの子供が兵舎に侵入したと聞いてな」

勇気ある子供の顔を見に来た、と子供達の前でしゃがみ込み二人いっぺんに抱き上げる。
なんとも微笑ましい姿に、皆の顔が自然とほころぶ。私も、先ほどのナナバさんの時とは違う意味で心臓が高鳴った。
いつも仕事に打ち込むエルヴィンが子供を抱き上げるなんて、平和な景色しか思い浮かばない。

「ガルとモコだな。なあ、隠れん坊しないか?」

「うん!いいよ、ボクかくれんぼうする!モコもしたいよな?」

兄の問いかけに、妹はうなずいた。どうやら隠れん坊で決まりらしい。
するとエルヴィンは二人を地面へ下ろし、五十秒以内に隠れるよう指示を出す。

「リヴァイ班の皆も隠れてくれ。鬼は私とリヴァイだ」

エルヴィンの唐突な発言に、皆は声をそろえて驚きの声を上げ顔を引きつらせた。
エルドさんは皆の気持ちを象徴するかのように、嫌な予感がする、とつぶやき額に手を当てる。
皆の気持ちを分かっているのかいないのか、エルヴィンはリヴァイへ一言二言耳打ちをした。

「いいかお前ら。壁外調査へ向けての特訓と思え。鬼に見つからないよう必死に逃げろ。見つかれば今晩の夕食は抜きらしいぞ」

「ええええ!?そんな!!」

リヴァイの言葉にエレンは悲痛の叫びを響かせた。しかし、全員の目つきが変わる。
ネス班長が来るまでの時間つぶしのはずなのに、とんでもないこととなった。
壁外調査の予行演習とも言える隠れん坊が、今、始まる……のだろうか。
(……これは巻き込まれたら厄介だ、私は洗濯の続きをしよう!さっさとこの場から立ち去ろう!)
ゆっくりと後ずさり皆から離れようと試みたが、あっさりリヴァイに見つかり、走り出せば乱暴に腕を掴まれた。
放してくれと言わんばかりに腕を振ってやれば、「なあ、いつの間にナナバと仲良くなったんだ」とささやかれ、なんとも寒気のするような笑みを浮かべこちらを見てくる。

「……ナナバさんとは、以前から話しをする仲だったよ」

「言い訳は後で聞いてやる。お前もさっさと隠れろ」

「あの、私は仕事が残っているので、遠慮しときます」

「それとも今ここで髪の触り合いでもするか、俺と」

「はあ!?どうしてそうなるの!」

「男に好き放題触られやがって。まあ、この話は後だ。いいからさっさと隠れろ、これはエルヴィンの指示でもある」

「……エルヴィンの?分かった、隠れればいいんでしょ!」

「せいぜい俺に見つからないよう頑張るんだな」

(ああもう、最悪だ!)








*NEXT*







-あとがき-
純血人生のナナバさんは男性として突き進ませてください。ナナバさんだけは優しく純愛でいてほしいと考えています。笑
エルヴィンとリヴァイが鬼の隠れん坊って……チートすぎますかね。
兵舎内は広いだろうなあ、と勝手にイメージして上官二人を鬼にしたのですが。リヴァイ班の皆さまファイトだ!←
ガル(9歳)とモコ(7歳)ですが、以前登場したフリル同様に完全なるオリジナルキャラです。

あ、なにより雑巾の件、申し訳ありません。おいおい!

次回に続きます。