純血人生 6






兵舎の掃除をしていた時のことだ。
通りすがりの上官から声がかかり、その時の台詞が「あ、ちょうどいいところにいた」この一言である。
急遽、上官の指示によりトロスト区へ出向くこととなった。指示とは、トロスト区に属する駐屯兵団の隊長に大砲に関する書面を手渡すというもの。先日新しく導入された機材と関係があるらしく、いかにも厳重に密封された封書を預かった。
たまたまいいところにいた部下へ仕事を押し付けてくるものだから少々腹立たしく思えたが、大切な書面を預けられるということはそれなりの信用を持ち合わせている証拠だろう。そう良いように考え、面倒な仕事を押し付けられた!なんて感情は押さえ込みさっさと兵舎を出た。

兵舎を出て数時間後、トロスト区へ到着した後にウォール・ローゼの壁上へ行くこととなった。
壁門を管理する駐屯兵団の兵士が特別に案内してくれるとのこと。何故そうなったか、答えは簡単。隊長が壁上にいるからだ。
壁上へはリフトで上るのかと思いきや、特設されている木造の螺旋階段を使用するらしい。体力作りも兼ねて兵士は螺旋階段での登頂を義務づけられているのだとか。その体力作りともなっている螺旋階段ときたらとんでもない高さである。階段を上りきれば五十メートルの壁上へと到着するのだから当然と言えば当然かもしれないが。上の方など階段なのか闇なのか分からないほどだ。これを今から上るわけか……明日は筋肉痛決定だ。
一人心の中で悲鳴を上げている間にも案内人の女性兵は慣れたようにの階段を上り始めた。あわてて後ろに続く。
一段一段上るごとに体力が登頂まで持つか不安になりつつ、それ以上に頭は壁外への興味に支配され始めていた。
五年前、シガンシナ区からウォール・マリアを巨人に突破されたので、壁外と言えど以前は人類が活動していた領域になる。しかし、現在そこには巨人がいる。巨人を見たことがないだけに緊張が走った。怖い、怖いけれど巨人がどのような生体なのかも気になる。
途中で息切れし始めた私に気付いた女性兵は、笑って後ろへ回り込むなり汗ばむ背中を押してくれた。なんて優しい人なんだ!あなたが隊長でいいですよ、と冗談を言いながらも先へ進み、数分かけて何とか上りきった。壁上へ着くなり膝に手を当て必死に呼吸を整えた。リヴァイに体を鍛えるよう口うるさく言われる理由が良く分かった気がする。

壁上は質素であり、ただレールが敷かれその上を無数の大砲が設置されていた。もちろん大砲の砲口は壁外へと向いている。
階段を上りきった箇所からしばらく歩いた場所に男性兵と話す隊長がいた。
書面を預かった上官の名を告げ手渡すと、それを受け取るなりもう片方の手で壁外を指差した。差されている方角を見てみれば、土煙を上げながら何かがこちらへ向かってくるのが分かる。それが何なのか、二十秒もしないうちに姿形がはっきりと見て取れた。まるで少女のように可愛らしい素振で壁へと走ってくるのは男性の巨人だ。顔は外見だけで推測するならば二十代半ばといったところだろう。壁上の人間を見て面白がっているのか表情はニヤけるような笑顔である。
隊長が、「一発くらわせてやるか」とつぶやくと、兵士は大砲に砲弾を装填し、隊長の合図で雷が間近で落ちたかのような砲音と共に砲弾は巨人へと放たれた。しかし砲弾は巨人の頭上を通過し荒れた大地へと投下。激しい爆風にも構わず巨人は壁へと進撃してくる。ついには壁へ激突し後ろへひっくり返った。諦めの悪い巨人なのか、のそのそと立ち上がるなり、遥か上空の壁上へと腕を伸ばしてはニヤけた笑顔のまま耳元まで裂く大きな口をカパッと開ける。
その姿を目の当たりにして後ずさりしてしまった。
「壁に向かって走ってくるとは珍しい、奇行種だな。君に惚れたんじゃないのか、あの巨人」などと巨人を見下ろしながら無表情で話す隊長に、冗談はやめてください、そう本気で言い返した。
初めて見る巨人は人間の何倍も大きい身体ではあったが、頭、胴体、腕、足……まったく人間と同じであった。恐怖のあまり足元が定まらずにいる私を、案内人の女性兵が支えてくれた。そろそろ下へ行きましょう、そう声をかけられ再び螺旋階段へと向かう。
本来なら一般人の立ち入りは禁止の壁上にいること事態ままならないのだが、上官に渡された書面となると本人へ直接渡すのが義務である為今回は仕方のないことだった。それを承知の上で女性兵も案内してくれたのだろうが、あのような恐怖を見ることになると前もって分かっていれば隊長が壁上から下りてくるまで何時間でも待っていれた。
恐怖のあまり逃避するようなことばかりを考え階段を下りていると、すれ違った男性兵二人の会話に足が止まる。

「一ヶ月後、調査兵団は壁外調査だとさ」

階段で棒立ちする私に気付いた女性兵は、下りた階段を上り目の前で声をかけてくれたが、何を言われたのかは覚えていない。
残酷なものだ。つい先ほど巨人を見たばかりなのに。
必死に呼びかけてくれる女性兵にハッとし、心配の顔色を浮かべる様に申し訳なくなり何度も謝罪した。そして再び階段を下り始める。階段を下りるたびに響く足音が何かのカウントダウンのように聞こえ、居心地の悪さといったら無かった。

その日の夜、リヴァイはいつも通り部屋へ帰って来た。すぐ風呂へ入り、今はソファーでくつろいでいる。
私はベッドの脇に座り、くつろぐリヴァイを眺めては窓から見える壁に視線を移した。調査兵団の兵士長である以上、誰よりも早く壁外調査の計画を知っていたはずだろうに何も聞かされていない。まあ、これはいつもの事だが。必ず壁外調査の前夜に告げられると前々から決まっている。なので私からも壁外調査の話は一切しない。
だが、今回は焦るような感情が湧いて仕方がなかった。あの巨人を見たせいで、リヴァイ達がそれと戦う姿に加え、最悪の事態までも想像してしまい恐怖のどん底に陥れられる。先ほどから何度も、何度も。

「今日はどんな仕事をしたんだ」

気付けばリヴァイが横に座っていた。いつの間にこちらへ来た!?
しかも話題の振り方が最悪だ。仕事自体は兵舎の掃除と書面をトロスト区の隊長へ届けた、この二つだけれど……壁上で巨人を見たなどと言えば機嫌を損ねるのではないだろうか。
それはそれで違う恐怖が待っている……ここは言わないでおこう。

「兵舎の廊下を掃除して、あといろいろ」

「昼ごろ兵舎から出て行っただろ、どこへ行ってた」

「へ、どこから見てた!?」

「うるせぇな、どこでもいいだろうが」

目を細めるリヴァイにあわてて、上官の指示でトロスト区に行ってたの、と返事をする。
トロスト区に行くぐらいなら何も疑われることはないだろう。上官からの頼みごとで兵舎を出るなど頻繁にあるのだから。

「何の指示でトロスト区へ行ったんだ」

「書面を駐屯兵団の隊長に渡すよう指示があって」

「その隊長に何かされたのか」

「は?まさか、何もないよ。書面を渡してすぐに帰ってきたよ」

「嘘つけ、何かあっただろ。お前の顔、真っ青だぞ」

リヴァイの一言に、すぐさま頬を手で覆った。顔に出ているなんて実感がなかった。
手鏡を見てみれば唇が真っ青で目の下にクマが色濃く浮かんでいた。寝不足と体調不良を足したような自分の顔に、うわあ、と声をもらしてしまう。
もう寝るわ、そう告げて布団にもぐりこんだ。そんな私をしばらく無言で見下ろしていたようだが、気付かないフリをしているとソファーへと戻り再びくつろぎ始めた。
……その日に見た夢は、言わずとも巨人が出てくる悪夢だった。

三週間後、リヴァイが兵舎に不在の日のことだ。エルヴィンに昼食を誘われ食堂の隅のテーブルで食事をとった。
そろそろ壁外調査の話はリヴァイから聞いているだろうと、さも当たり前のように言われたが、私は首を横へ振る。

「聞いていないのか?」

「うん」

「相変わらずだな、リヴァイは」

壁外調査の一週間前ともなれば、調査兵団に属する兵士の家族や、門が開けれるトロスト区の住人には既に知れ渡っている。
私がその情報を知らないとでも思っているのか、それとも俺が言わなくとも知っているだろうと考えているのか。どちらにせよ前夜になるまで言ってこないはずだ。
リヴァイは何を考えているのやら、と二人で首をかしげる。そしてしばらく無言の間が続いた。いつもなら気軽に会話をするのに、今日は何故か空気が重い。
エルヴィンと食事をするなど最近では滅多にないことだ。それゆえにたくさん会話をしたいところだが、私の頭の中は巨人で埋め尽くされ何の話題も思いつかない状況にある。あの日から何をしていても巨人のことを思い出してしまうのだ。
巨人はあの大きな口で人間を食べる、どのようにして人間を食べるのだろうか、引きちぎって?踏みつぶしてから?魚のように丸焼にするのか、それとも食べやすいように切り刻むのか、手足を先にもぎ取っ……気持ち悪い。
ウワサで残酷な食べ方をするとは聞いたことがあるけれど、実際はどのようにして食べるのか全く知らない。
(もしも、壁外調査でリヴァイやエルヴィンが巨人に、あの大きな口の中に……いいや、考えるな!縁起でもない!)

「……ねえエルヴィン、三週間ほど前の話になるんだけど」

巨人を見た、と告げればエルヴィンは目を見開き食べていたパンを皿の上に置いた。

「どこで見た」

「壁上。上官から預かった書面をトロスト区の隊長に持って行った時、運悪く見てしまって」

「それでか」

なるほど、とエルヴィンはうなずき閃いたように私の顔を見てくるものだから首をかしげると、笑顔を向けてくるなり再びパンを食べ始める。

「いや、リヴァイがなの様子がおかしいと気にしていてな。俺もそれなりに探りを入れようと食事へ誘ったんだ」

「私の様子?いつも通りだと思うけどな」

「リヴァイいわく、元気がないらしいぞ?」

「嘘、そんなことないよ」

「巨人を目の当たりにした衝撃で、気付かぬうちに気分が落ちていたのだろうな。実際、今も元気がないように見える。表情が暗い」

「え?今も!?」

「食が全く進んでいないじゃないか。ほら、食べろ食べろ」

俺のパンも食べなさい、と焼かれた魚が横たわっている皿の上にパンをのせてきたものだから笑ってしまった。初めて見た、魚がパンの下敷きになっている図。しかし、それを見て巨人が人間を踏みつぶすイメージが脳裏に浮かび、胃に痛みが走る。今の私は何でもかんでも異常なまでに巨人と結びつけてしまうクセがついている傾向にある。そんな私をリヴァイは少なからず見抜いていたのだと考えると、少し申し訳なく思えた。

「エルヴィン……巨人って怖いね」

「そうだな、恐ろしい奴らだな」

「壁外に行けばたくさんいるんでしょ」

「ああ、いるぞ」

「今まで何体見てきたの」

「数え切れないさ」

「そっか」

「食事時に巨人の話はよそう。これ以上の食欲が失せては大変だ」

「……早く帰ってきてね」

その台詞に返事は無く、頭を二度撫でられた。石投げをした時のように、撫でないで!と言い返す余裕もなくうつむいてしまう。
エルヴィンの優しさが、辛い。今も壁外調査の一週間前で忙しいだろうにリヴァイから私の話を聞いて気にかけてくれているわけだ。
ああ、情けない。巨人を一体見たぐらいで弱気になってしまうなんて。リヴァイやエルヴィンを前にすると、いかに自分が小さいか思い知らされることが多い。図体だけ大人、まさにそれだなと思う。
これ以上暗い顔を見せてたまるものか、魚を下敷きにするパンに手を伸ばし勢いよくかぶりついた。

夜、リヴァイが帰ってきたら謝罪しようと計画を立てていたというのに、部屋の扉が開かれるなり超絶不機嫌な表情を私に向けてくるものだから、おかえりの言葉さえ出てこなかった。
(なに、なに、なんなのさ……!)

「今日、トロスト区に用があってな。そこの隊長と会ってきた」

あれ、嫌な予感がする。

「お前、壁上で見たらしいな」

「あ、や、螺旋階段がすごくてね、びっくりだったわあの階段」

「巨人を見たんだろ。白々しいこと言ってんじゃねぇ」

リヴァイの眼光から逃げるよう後ずさっていると、壁まで追いつめられた。
どうして隠してた、と問われ、言ったら機嫌を損ねると思って、そう答えると眉間にしわを寄せ、隠された方が気分悪いに決まってんだろクソが、響くような低い声で怒りをぶつけられた。今となればあの時どうして言わなかったのかと後悔の嵐だ。とにかく謝罪を続けたが、呆れたように私から遠ざかり、その日は口をきいてくれなかった。
翌朝、リヴァイは既に仕事へ行ったのか一人で起床し支度をすることとなる。顔も見たくないと言われているような行動に思え、頭を抱えた。仕事中もどうすれば機嫌を直してくれるのかとその事ばかり考えてしまい、調理をする手が止まるなど不謹慎の塊と化していた。このままでは皆に迷惑をかけて更に反省のオンパレードとなってしまう。気持ちを切り替えなくては。
リヴァイが帰ってきたらもう一度気持ちを込めて謝罪する!そう意気込み仕事に精を出した。

部屋へ帰るなり、リヴァイがいつ帰ってきても即座に謝罪できるよう扉前で構えた。
しかし夜中になっても帰って来る気配が無くただ空腹を耐えるだけの時間となった。そんな状況下で次に襲って来たのは眠気だ。空腹以上に眠気を耐えるのは辛い。日付が変わる頃、立っているのが辛くなった為に床へ腰を下ろし、膝を折り曲げて帰りを待った。
日付が変わり更に二時間後、今日は帰ってこないのかもしれないな、自分にしか聞こえない小声でつぶやいてみる。壁外調査まで一週間を切ったのだ、装備品の補充であったり計画の再確認などと様々な準備に追いまわされているのは予想がつく。
食事どころか手洗いうがいもせず帰ったままの格好で構えていた自分に笑いながら立ち上がったその時、扉が開いた。

「リヴァイ!おかえ――」

「てめぇ、エルヴィンにはすんなり言えたのか」

「は?」

「巨人を見たと、昨日飯食ってる時にだ」

「……ああ、うん、言ったけど」

「どうして俺に言わねぇでエルヴィンに言えるんだ」

「あれは、その場の勢いっていうか、ごめん、もうごめん!」

まずい、まずいぞ、昨日より怒ってるじゃないか。エルヴィンも良心でリヴァイに報告したのだろうけれど、全てが矛盾してしまい悪い方へ流れている。これ以上は機嫌を損ねたくないのに、これでもかと怒りに満ちたリヴァイを前にどうしろというのだ。今日こそ殴られる。
顔をうつむかせ恐怖に耐えていると、リヴァイはその場に片ひざを付き私の顔を下からのぞいてきた。

「お前、まさかエルヴィンに気でもあるのか」

「……は?」

「正直に答えろ」

「気なんて、無い。気の知れる人であるから話しただけで」

「だとしたら、俺は気の知れた人じゃないってことになるな」

「違う、そんなことない、リヴァイは――」

「もういい」

何が「もういい」と言うのか。切り捨てられたような一言に聞こえた。殴られていないのに殴られた気分である。
兵服を脱ぎながら歩く姿に手を伸ばすが、すぐに引っこめた。震えるばかりで声さえ出ない。床を見てどうすればいいか必死に考えていると、風呂の扉を閉める音が聞こえた。
全ては私が悪い、機嫌を損ねるからと何も言わなかった。ここから間違っていたんだ。それでいて勝手に巨人のことばかり考えては暗くなって。そんな私に気付きリヴァイは少なからず心配してくれていた。
(……ダメだ、このままではダメだ!)
風呂場へと走り、勢いよく扉を開け中へと飛び込んだ。
は!?と聞いたこともない声を上げるリヴァイだが、気にせず濡れた風呂床に土下座の体勢を取る。

「ごめん、ごめんなさい!これからは何があっても隠しません、全て話します、だから、許して!リヴァイごめん、ごめん!」

私の行動に少々驚いていたようだが、しばらく沈黙が続いたかと思えば大きく溜め息をつき何故か上から水をかけられた。
服が体に張り付き髪から水が滴り落ちる。

「……もういいって言っただろうが」

「だって、それって」

「勝手に思い込むな。俺も少し過剰になっていた部分がある」

すると風呂場から出て行き、先にお前が入れ、と手ぬぐいを放り渡された。
許してもらえたのだろうか、今の反応はどう理解すればいい?
しかし、風呂から出ても一言も口をかわすことなく終わった。翌日から数日、リヴァイは部屋へは帰って来ず晴れない気分のまま一人で過ごすこととなる。このまま壁外調査へ行ってしまうのかと心が折れそうになっていると前夜に疲れた表情を浮かべ帰ってきた。帰ってくるなり風呂へ入り、今は普段通りソファーでくつろいでいる。私も同じく普段通りベッドの脇へと座り時間を持て余していた。
そんなゆっくりとした夜独特の空気が流れる中で、思い出したかのように一言。

「明日、壁外調査へ行ってくる」

知っているとも言えず、うなずいて返事をした。
改めて壁外と聞き、あの巨人が鮮明に思い浮かぶ。耳元まで大きく裂けた口、あの口で人間を喰らうんだ。壁外調査では必ず死者が出ると分かりきっている。リヴァイやエルヴィンが無事に帰ってくる保障などどこにもない。再び巨人がどのように人を喰らうのか予想の映像が脳裏に流れ始めてしまう。
顔をうつむかせ拳を握りしめていると頭をコツンと小突かれた。あわてて顔を上げれば真正面からこちらを見下ろしてくるリヴァイがそこにいた。いつの間に!?また気付かなかった。……ああ、心臓に悪い。
ベッドへ腰かけるなり拳に手を添えられる。まるで心配するなと言うかのように。そしてそのまま私の手を自分の肩へと持っていく。
(…………へ、肩?)

「この前の続きだ」

「え、なに、肩揉めって?」

「ぐだぐだ言ってねぇで早くやれ」

反抗することも出来ず両肩に手を添え揉み始めると、右だ左だ斜め上だと細かく指示してくるので少々腹立たしかったが、こうして会話できている今が嬉しいと思えた。
明日は早く帰ってきてね、そうエルヴィンに言った台詞をリヴァイにもポツリと言えば、すぐに帰ってくる、との返事をくれた。

「しかしリヴァイの肩って見た目よりゴツイね、手が痛い」

「見た目だと?どういう意味だてめぇ」

「!や、そろそろ寝る!?」

「……そうだな。寝るか」

そう言って私のベッドにもぐり込むものだから久々に顔が引きつる。

「ちょっと、もしもし、ベッド間違えてるよ。寝ぼけてんの?自分のベッドは向こうでしょ!」

「ここで寝る」

「……じゃあ私はリヴァイのベッド借りるね」

「バカか、お前もこっちで寝るんだ」

「それは無い、おやすみ」

意味不明を発動するリヴァイを振り切り、隣のベッドへと入った。
するとリヴァイが、やっぱりこっちで寝るか、などと言いながらもぐり込んできたので思わず床へ勢いよく転げ落ちてしまう。

「なんなのさ、一緒に寝たいの!?」

「お前……良くそんな恥ずかしい台詞を言葉にできるな」

「それを行動してるのリヴァイだから!」

結局床へ転がる私を掴み上げベッドへと引き込まれた。
また自分のベッドへ戻れば同じことの繰り返しになる予想がつく。そんなエンドレスを続けるならいっそうの事寝てしまおう。
リヴァイに背を向けベッドの隅で丸くなり目をつむった。すると背後から、俺に背を向けるな、との低い声にあわてて寝返りをうつこととなる。
ああ、明日は寝不足決定だ。







*NEXT*







-あとがき-
ラブ度が無い!・・・すみません。
3巻で調査兵団が壁外調査へ行く話と連動しています。
次回は主人公のご登場です。